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オオルリシジミ

2023年5月20日国営アルプスあづみの公園にオオルリシジミの撮影に訪れた。オオルリシジミは絶滅危惧種でなかなか見られないチョウだ。

オオルリシジミはクララという植物を食草にする。

クララという名称の植物も珍しい。世代としてクララという名を聞くと、にわかにアニメの「アルプスの少女ハイジ」のクララを思い出す。クララは牧草地などに生える植物で手入れをされた場所でないと十分育たないようだ。名前の由来も食べると頭がクラクラするほど苦いことからクララを言う名になったそうだ。

 

例年6月になってから雌雄の成虫が姿を見せるが今年は早い。交尾もして卵も産んでいた。

写真ではカップル成立後の写真だが、成立までの過程を眺めているのも楽しい。オスは懸命に自分の存在をアピールし、メスの気を引こうとする。メスが気に入ってくれないと相手してもらえないし、別のオスが飛んでくると争いになる。子孫を残すのは強い個体だけが許されると言う自然の摂理を目の当たりにする。そのような世界に感動をするし、逆に胸を痛める。

撮影をしていないときは考えごとをしている。メスと交尾できるオスは良いが、私は、メスに気に入ってもらえなかったり、オス同志の闘いに敗れた個体の行先が気になってしようがない。動物の生存競争にDEIなど存在しない。だから、どうしても気になる。中には別のメスを見つけて晴れて子孫を残すことができるものもいれば、機会もなく朽ち果ててしまう個体もいる。後者はついつい自分の身に置き換えてしまう。私の人生では競争に打ち勝ったという記憶がほとんどない。だから、メスに出会えないオスの顛末が気になって仕方ないのだ。「明日があるさ。巡り合いがまたきっとある。」そう行ってオスを見送る。

夕方になると、チョウたちの交尾も終わり、一時飛び回るがすぐに静かになる。絶滅危惧種のオオルリシジミは、公園で大切に保護されている。成虫は命を繋ぐとやがて滅ぶ。そんなことは分かっているのだが、束の間の儚い青春を見ているようで、交尾の終わった個体に対しても「いつまでも元気でいてね。」と声をかけて立ち去った。