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伊藤哲哉写真展「SEASONS~北岳~」の開催にあたって

新型コロナ禍の中、写真展を開催するかどうかかなり悩んだ。漠然と失敗を恐れ、夏頃まで悩んでいた。「観覧者が著しく少ない。」、「販売予定のガイドブックが売れなかったらどうするか?」、「コストはかなりかかっている。」、「勤務先から何か言われるかもしれない。」、「自分はとんでもないことをしている。」などネガティブな考えで頭の中が一杯になり、一時期、憔悴していたようにも思う。

 

このような状況で「失敗とは何か?」と自分に問うと具体的な事象が浮かばなかったし、「いつならば開催できるのか?また、成功とは何か?」この答えもなかった。 背中を押してくれたのは、8月に開催された山岳写真仲間の曽布川善一写真展『富士山~物語との出合い~』だった。新型コロナ禍で何度も開催が延期された。中止も考えたはずだが、彼の英断に感銘を受けたし、写真展での彼の笑顔がとても清々しく見え、自分にとって一条の光が見えたような気持ちになった。この気持ちが通じるはずもないが、教えを受けた気がして陣中見舞いを届けた。

 

また、10月にオリンパスプラザ東京で開催された喜多規子写真展「栞 ―four seasons―」で、喜多さんが観覧者一人ひとりに丁寧に熱のこもった説明をしている姿を見て、プロフェッショナリズムを感じた。私は無名であるが、写真家としてこうありたいと思い、写真展を開催しようと決意した。

 

さらに、山岳写真家菊池哲男氏がお弟子さんの武井眸さんと開催した2人展「八ヶ岳〜凍てつく岩稜と森〜」「あるがままに〜ある山岳写真家の自然との対話〜」が私に与えた影響も大きい。チャレンジャースピリットを感じた。やはり、山の力は大きいし、山を撮影する写真家の存在を示したい。そんな思いが沸々と湧いてきてきた。 チャレンジャーでない自分が恥ずかしくなった。失敗と思っていたことが矮小なことであり、撮影山行と同じでやってみない(行ってみない)と分からないという気持ちに変化した。もし失敗と分かったら次回につなげればよい。そう思うと自然と肩の荷が下りた。

 

もちろん、新型コロナの感染者数は増加傾向にあり、その影響は無視できないが、今は落ち着いた気分で自分の写真展に集中している。

 

観覧者の皆さま、自分そして何よりも山の力を信じて、最善の努力で写真展に望みたい。